8寸(24cm)の高飯を食べるという、下須地区に約500年に渡って伝わる非常にユニークなお祭りです。
毎年12月初旬に行われる奇祭です。残念ながら一般の人は参加をすることができません。
◇奇祭「万歳楽」の2日間◇
祭事は「よどの日」と「ひのはれの日」の2日間にわたって行われます。
よどの日
「よどの日」は、担当する地区各戸から当主が夫婦連れで当屋に集合し、早朝より餅をつきはじめます。その後、それぞれの役割に従って準備をします。その主な準備というのは、受付、挨拶係、水汲み、米とぎ、飯炊き、火たき、料理係り、小回り、飯運び、米つぎ、酒わかしなどです。そのうち、神職が訪れ神前を準備し祭事がはじまります。この行事は普通の前夜祭と同じで地区班長と当屋の主人だけが参加します。これが終わって、いよいよ餅食いの行事となります。
餅食い
餅食いの参加者は、担当地区内の当日朝早くから来ている当主夫婦を除き、各戸から1名ずつと隣の地区から各戸1名ずつ。この人たちが呼ばれて、今朝ついた餅とご馳走が出されます。その後で地区内の人は昼食に餅を食べ、午後はまた地区内の子どもたちやその外全員が呼ばれて餅を食べます。そして、地区内の人は第1日の後片づけと翌日の飯食いの用意を整え、夕食を取りこの日の1日を終わります。
ひのはれの日
2日目の「ひのはれの日」は、飯食いの日です。まず地区内の当主夫婦は役員として早朝より集まり、各地区からの代表者(正式出席者)15名が来るのを待ちます。地区の代表者は地区で集めた『つなぎ米(1合)』を持参し、受付でその地区の件数分の小餅と御神酒を受けて神前に座ります。代表者15名が揃うと祭事が始まります。
祭事と「孤敷(こもしき)」
これから先の行事進行は、全て「弧敷(こもしき)」と呼ばれる特別職司会によって進められます。祭事は弧敷(こもしき)の司会のもとに神官の祝詞奏上があり、参列者1人ひとりの拝礼が行われ厳粛なうちに終わります。
飯食いと三献(さんごん)の儀
膳が出されていよいよ飯食いの行事に入ります。構成は正式な地区の代表者と神官、弧敷(こもしき)だけであって、その外の招待客は別室に席を設けるしきたりでしたが、現在は一緒に飯食いを行っています。
・[高飯] 高さ8寸(箸の長さ)に盛ることになっています。
・[料理] おひら(煮しめ)=大根、人参、こんにゃく、豆腐
・[なます] 大根にイダかサバかが一切れ入っている
・[つぼ] 里芋の煮込み
・[味噌汁]
膳が出揃ったところで弧敷(こもしき)の司会により、まず地区引受係りの挨拶があり、三献の儀に入ります。三献の儀とは1個の木杯で神酒を三献ずつ受け、これが3回まわってくるというもので、1人で合計9杯の神酒を受けることになります。
椀かくし
高飯は神様のために全部食べなければなりません。やっとのことで食べ終わると男性は「飯はないじゃろうかい」と催促するのが作法となっています。接待係りの女性はその椀をとってご飯をつごうとします。これから先のご飯は少しずつですが、つがれた以上は全部食べなければなりません。残すということは、神への冒とくを意味しており食べることが苦しくなった男性は、椀を隠そうとしますが女性がそれを取ろうとする。これが有名な「椀かくし」です。
カカア飯
最後に「カカア飯」の行事に移ります。今までの雰囲気とは違い、一同が正座をします。そこへ当屋の女主人と1名の女性が正装(紋付き)して現れ、丁重に挨拶をして順にご飯少しと「はさみざかな(こんにゃく)」をついでまわります。出席者がこの「カカア飯」を食べ終えると「飯食い」の行事が終わります。
次の当屋決定
再び厳粛な祭事に入り、翌年の当屋を決めます。これは大神の神意によって決定するもので、「幣(へい)くじ」によるものです。神職の祝詞の後、地区名が書かれた小さな紙片を盆に乗せ、その上を榊をつけたもので神職が静かに撫でるようにします。その榊にくっついて上がった紙片に書かれている地区が次の当屋を担当します。
萬歳楽の舞い
参加者が車坐に座り直し、次の舞いの行事に入ります。萬歳楽の舞いは右手に扇子、左手には榊に御幣をつけたものを持ち、「萬歳楽、萬歳楽、萬歳楽」と3回唱えながら同じ動作を3回行うものです。
最後には当屋の主人と次期当屋の主人とがそれぞれ正装して、「舞渡し」と「舞受け」を行って舞いの行事が終わります。
御神体の入れ替え
続いて、新旧御神体の入れ替えが行われます。これは、小さなお堂、つまり小さい神輿の中に白米1升が御神体として納めてあったのを取り出し、今年の白米1升(精白してといで乾かしたもの)を半分ずつ混ぜて、その半分を新たに御神体として納め、残り半分は各氏子に配られます。
新当屋への御神行
新たなご神体を納めた御輿が次の当屋へ行きます。この時、土産として豆腐7丁と酒1升が持たされます。新当屋では既に伝令によって知っているので、その引き受け地区の人が総出で迎え入れます。
他地区の人たち
2日間の祭りの期間中、引き受け地区の人は全員が祭りに参加します。しかし、他地区では3名ずつの代表者が参加するだけです。他の人たちは、「ホケリ」と称して仕事を休むことになっています。家によっては、餅をついたりして萬歳楽を祝い、1年中の「埃落とし」をするのです。
参考文献「柿木村誌 第1巻」