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有機農業は生き方。NPO法人ゆうきびと代表福原圧史さん

福原圧史さん写真

(NPO法人ゆうきびと・代表・福原圧史さん)

プロフィール

柿木村有機農業研究会会長、食と農・かきのきむら企業組合理事でもある。「有機農業は生き方」。1972年より柿木村役場勤務。高度経済成長期の真っただ中、世の中の流れが換金できる作物を追い求めていることに疑問を持ち、30年以上も前から旧柿木村で、家族のために安全な野菜や米を作り、その余剰分をおすそ分けする自給を優先した農業を提唱してきた。有機農業をけん引してきた第一人者。退職後は有機栽培で、自給を確立した農業を営んでいる。

NPO法人ゆうきびとのきっかけ

食の安全に関心のある中国山地の農業生産者や都市の消費者に対して、有機農業の啓発と普及に関するさまざまな活動を行っており、安全な食を通して人びとの健康促進や自然環境の保全、地域社会の発展に寄与することを目的として、平成22年に設立。広島県、山口県、島根県の行政、農協などのOBや有機農業生産者、消費者、ボランティアグループが中心で、中山間地域の有機農業を支援しながら有機農業を広めていく活動をしています。
今は「柿木村」=「有機農業」として知られていますが、最初は有機と言うことではなく、「自給力を高めよう」ということがきっかけでした。昭和50年頃です。当時はちょうどオイルショックの後で、自給をきちんとしていかないと、金儲けだけを考えていたら、またオイルショックのようなことがあったら経営が難しくなってくる。どんな時にでも「自給をベースにしていればなんとかなる」、という提案をしていたのですが、高度成長まっただ中、「いかにして儲けるか」という時代に、「自給」そのものがほとんど受け入れてもらえなかった。今でもそういう傾向はありますが、当時は「何が自給か」と言う感じでしたね。
昭和55年当時、山口県には有機農業研究会がすでにあったが、柿木村の仲間たちに自給の理解が得られない中、1人で有機農業研究会に入会した。そこで出会った岩国市の消費者グループとの出会いがきっかけで柿木村有機農業研究会を発足、柿木村の有機農業がスタートし、その繋がりが「NPO法人ゆうきびと」がはじまるきっかけですね。


有機農家 有機野菜

(昔ながらの手法で畑を耕す有機農家さん(右)、安心・安全な有機野菜(左))

現在の取り組み

広島市のスーパーで各金土の2回、JR和木駅の駅舎で毎週土曜にオーガニックマルシェを開いて有機野菜の販売をしたり、毎年11月下旬に広島の映画館を1週間貸しきって世界の有機農業や食育などの映画を上映する「食と農の映画祭in広島」の実行委員会に参加したり、全国有機農業推進協議会開催する有機農産物の「マッチングフェア」で有機野菜を集めた商談会に参加したりと様々ですね。2014年の映画祭では1週間で来場者3,000人の来場者がありました。他にも広島のIWAD環境福祉専門学校・農園芸生産コースで有機農業の講義をしたり、有機農業スタートのきっかけとして「有機農業入門塾」を開いたりもしています。最近ではより食の安全を求める人が多くなってきました。自分の口に入れるものがどれだけ自分自身の健康に影響するのかをみなさんが考えるようになってきたと思います。
また中山間地ではお金を優先すると生きることが難しい。農山村に住みながらも都会とのネットワークを活かして「自給的な暮らし、農的な暮らし」を常に考えていくことが山間地の生き残る道だと思っています。

映画祭パンフレット 塾募集パンフレット

(食と農の映画祭In2014開催案内(右)、有機農業塾募集案内(左)
 

有機農業は生き方

金儲けも必要ですが、本当の豊かさは金だけの問題なのか、ということを考えてみてほしい。本当の豊かさは、モノの豊かさではなく、自然や人との関わりの中にあるもの。
有機農業は生活の自給が第一の目的ですが、できるだけ伝統的な農法をまもりながら、合理化せず「ホンモノ」を作っていくということが大事だと思う。今の時代は経済中心で、儲かるものをつくろうとしているが、山間地の農業で儲かるものはない。農業は儲かるから続ける、儲からないからやめるというものではない。大井谷の棚田も高尻や木部谷の農地も河津・金山谷の田んぼやワサビ田も蓼野や椛谷も何十年世代にもわたって生きるために耕し続けてきたものです。有機農業は、豊かで安定した農的暮らしを次の世代に繋げることだと思います。
また農薬や化学肥料、合成洗剤などの化学物質を使用しない暮らしをすることによって、生物が永続的に共生できる自然環境を守ることができる。循環的意識を持つことが大切です。きれいな環境のままで、もしくはきれいな環境にして次世代に渡すことは、今の時代を生きている私たちの使命だと思います。
そして田舎の経済を考える時、森や里山、里や川などで採れる、林産物や山野草、椎茸、わさび、栗などの特産物、米や野菜の農産物、ゴギや山女魚、鮎や蟹、うなぎなどの川の恵、こうした地域資源を活用して生きること。そうすれば田舎でもっと豊かに楽しく生きられると思うんです。自然と共生することも、有機農業では大切な考え方です。

はぜ干し 釣った魚をさばく子供たち

(はぜ干し(右)、釣った魚をさばく子どもたち(左))

本当の意味の暮らしをしている、そう語れる町に

吉賀町は自給的、農的な暮らしを常に考えながら、皆がお金優先の考えでなくなれば良いと思うんですよね。あと吉賀町は高津川の上流域ですが、自給、農的な暮らしを通じて、みんなが循環的意識を持ってくれたら良いなと思う。
金儲けの有機農業をしたら、消費者にすぐバレる。本当はお金が大事だと思っているのに、理念のことばかり言うと「そんなことで暮らせるのか」とますます思われてしまうんだけど、かと言って「有機農業だからなんとか儲かりますよ」みたいな言い方をすると、「儲かるならやろうか」と言う人も増えてしまう。「儲かる」「儲からない」ではなく、「本当の意味の暮らしをしてるんだ」と、そういうことが誰でも語れるような町になればいいですよね。

(柿木村有機農業の出発点となった一通の手紙:左柿木村の有機農業のあゆみ:右)